青春恋愛ミッション

 それから1ヶ月後、こうたの母、洋子が、電話でこうたと会話している。
 洋子「こうた、高校時代の同級生の長野 優子さんのこと覚えている?」
 こうた「ああ、優子さんは吹奏楽部で仲が良かった女生徒さ。」
 洋子「その優子さんが、海外の有名音楽コンクールで最優秀賞を獲ったって、音楽関係者の間で話題になったいるそうよ。」
 洋子「その優子さんは普段は楽器のセールスウーマンをしていて、休みの合間に音楽活動をしていたその努力が認められたらしいわよ。」
 洋子「それで、高校時代の同級生や吹奏楽部の部員から何か彼女にメッセージが欲しいそうよ。またみんなで同窓会開きたいから今の連絡先を知らせて欲しいって、連絡が来ているわ。」
 こうた「ああ、わかった。じゃあ、俺のこの携帯電話の番号を伝えておいて。」
 洋子「仕事の方は順調よね?」
 こうた「とてもうまくいっているよ。当たり前だよ。」
 洋子「無理して、体壊さないようにね。」
 こうた「わかってる。」
 こうた「母さんも体に気をつけて」「じゃあ。」

 それから1週間後.......
 こうたが、営業先の出先で食事中に、いつもいるはずのアシスタント、すみれからこうたの
 携帯に着信があった。
 すみれ「自宅で....」「数日静養すれば...」「私...大丈夫。」
 連日続いた徹夜同然の事務作業が祟ったのか、すみれは、とうとうダウンしてしまったのだ。
 会話が途切れ途切れでおぼつかない様子に、心配せずにはいられないこうたである。
 すみれ「今期の...事業...分析結果と......来季の事業計画書.....、出来上がってます.....。私のデスクの......上に書類一式が.....おいてあります。」
 こうた「よくやった。書類、俺がきちんと提出するからね。」
 すみれ「せんぱい....ありがとう」
 こうた「どうした.....もうちょっとで昇進だぞ!!」
 こうた「この前の昇進試験はとても成績がいいって、部長が話していた」
 こうた「このままなら昇進は確実だって」
 すみれ「それは....よかった.....」
 こうた「こういう時は、おかゆで栄養のあるものを食べると吸収がよくなって回復が早いんだ」
 「あと、睡眠をよくとって、暖かくすること。」
 「よかったら、俺が君の自宅へ行って、おかゆ作るよ。」
 「ありがとう.....せんぱい....」
 「せんぱいとのコンサート行けなくなっちゃった」
 こうた「いいんだ。それより体調に気をつけるんだよ....」
 会社起(き)っての優秀人材と言われたすみれであるが、うわさによると、彼女はこれまでにない優秀さを発揮していて、もしかすると、こうたを越えて、飛び昇格するのでは...という憶測が社内に広まっていた。

 体力が旺盛なこうたは、そんなうわさは気にせず、比較的時間の取れる営業サービスが終わった、報告書を書く時間に、高校の同窓生、長野 優子と連絡を取り合っていた。
 こうた「ああ、優子さん、高校の同窓生、斎藤 こうたです。」
 優子「お久しぶり。こうたくん元気ですか?」
 こうた「元気です!! コンクール受賞おめでとう。」
 優子「ありがとう、こうたくん」
 電話での優子の声や雰囲気は高校の時とほとんど変わらない様子である。
 こうた「音楽頑張ったんだね」
 優子「そうよ、音楽なしじゃ、本当の私じゃないから」
 こうた「奈津子さん今どうしている?」
 優子「書店のマネージャーよ」
 「それで、いつも奈津子のいる書店から音楽の雑誌やら楽譜を手に入れているの」
 優子「こうたはどうしてる」
 こうた「電子機器メーカーの営業部で主任をやっているんだ」
 優子「私はふだん楽器店でセールスウーマンをしているの」
 こうた「優子は普段から音楽に恵まれて本当に幸せ者だなぁ。」
 「俺は、しばらく音楽から遠ざかっていたんだ。」
 こうた「僕ら、久しぶりに逢えないか?」
 優子「私もそう思っていたの」
 こうた「久しぶりの馴れ初めだから、まずは食事なんてどう?」
 「それから映画でも見て、それから......」
 優子「それはいい案ね。私も早く今のこうたくんを知りたくて.....」
 こうた「あの時から、何も変わっていないよ。街並みも、人も、風景も、......10年前と同じままさ.....」
 優子「あなたはどうなの?あれから変わったの、それとも同じ?」
 「友恵先生と仲が良かったみたいだけど......」
 こうた「気持ちは10年前と同じさ。いつからも、いつまでも優子を思っているよ。」
 「友恵先生は僕を導いた運命の道しるべだった。そのゴールには優子があるってことは今でも同じさ。」
 優子「こうたくんは私があなたをどう思っているのかわかるでしょ?」
 「そう、待ちきれなかったのよ。」
 「その空白の時間は、いろんな出来事があって、隙間を埋めることしかできなかったの。」
 「でも果実はなかったわ。こうして話しているだけでも心の埋め合わせができて10年間が巻き戻される気がするの。」
 こうた「そうだ、じゃあ、空白の時間をリセットしよう。」
 「今からでも二人でこころを合わせれば、10年の記憶は僕たちだけの夢もように変えることができるのさ」
 優子「私も同じよ。こうたくん素敵な大人になったわ。私も見習わなくちゃ。」
 「今になってわかったの、こうたくんがどれだけ私にとって大切な存在か」
 「私、今すぐ会いたい」
 こうた「あさっての午後6時に中央区仲大通りの”ホテルプラザセントラルパークアネックスファースト”の1032号客室に来てくれ。そこでいろんなことを話し合おう。」
 優子「わかったわ。楽しみにしてる。」

 報告書を作成したこうたは、送信を終えると、再び、すみれに電話した。
 すみれ「ああ、先輩。私、おかゆを作ったの。昨日服用した葛根湯(かっこんとう)が効いて
 きたみたい。」
 すみれの話し方は、以前よりしっかりしている。
 こうた「いやぁー、よかった。よくなってほっとしたよ。」
 「もっとはやく復帰したら、多くの仕事を任せられるのに。」
 「今は猫の手も借りたいほど、忙しいんだ。」
 「どうやら今週末の会議で、すみれちゃんの昇進が正式に決まるみたいだよ」
 「すみれちゃんって、さすがだ。」
 「上の方に行っても、無理せず頑張るんだよ。」
 すみれ「わかってる」
 「先輩も」
 こうた「明日の午後は用事があるから、時間を空けておいてくれないか」
 すみれ「わかったわ」

 翌日の報告会議では、人事異動発表のための話し合いが行われた。
 その中で、七海 すみれ​​の電子システム部営業課 課長への昇進、他5名の人事異動が正式決定された。
 その他業務拡大の体制に向けた人事が承認決定された。
 部長「諸君、今回の新体制への人事評価を大きな成果と受け止めるかどうかは今後の皆さんの努力と研鑽にかかっています。」
 「今回の決定により、七海 すみれ君他5名の大幅な昇進が決定されました。」
 「これまでにない大幅な刷新内容となっています。」
 「いずれもこの事業内で大変な成績を獲得した、素晴らしい人柄、助け合い、献身、努力が認められる優秀な同輩を認めるに至りました。」
 「これからも、彼ら彼女らを認め、見習いつつ、これからも、発展、貢献につながるよう、皆で励まし合い、良い成果業績が実りあるものとなるように共に頑張っていきましょう。

 早速タブレット端末ですみれの携帯に部長のコメントのメールを転送した。
 そのコメントにこうたの昇進祝いメール文を添えて送っておいた。
 こうた 「会議ですみれちゃんの昇進が正式に決まったよ」
 こうた「すみれちゃん課長昇進おめでとうございます。」
 「素晴らしい昇進ぶりに先輩として誇りに思います。」
 「これからも叱咤激励をよろしくお願い申し上げます。」
 「また喫茶にでも食事にいきましょう。」
 「我が課から幹部候補が選ばれたことは大変名誉あることと思っています。」
 「これからも研鑽努力を忘れずにさらに、良い業績を達成することにより社訓に則りつつ、この世の名に恥じない立派な幹部になってください。」
 「明日は、土曜日から日曜日にかけて私用で不在になりますので、お伝えしておきます。」
 「以上です。こうたより」

 翌日の朝。優子との約束の日がやってきた。
 すがすがしい朝は、優子との再会の日に最善のもてなしをしているように思えた。
 いつも通り起床して、軽い朝食を摂った。
 ハムエッグロールとホットココア、ヨーグルトだった。
 ココアの甘い香りは、心の穏やかさの表れである。
 午後6時になって、タクシーを呼び、目的のホテルまで移動した。
 ホテルの1032号客室にチェックインすると、早々と優子から電話があった。
 優子「少し早めにそちらへ伺うけど、いいかしら」
 こうた「待っているよ」
 (ドアをノックする音)「トントン」
 こうたは客室の覗き窓を見て、長い髪でスラーっと背の高い濃い緑色のワイシャツに紺色のタイトスカート姿の女性が立っていた。間違いなく優子である。
 こうたはドアの鍵を開けて扉を内側に開いた。
 優子 「こうたさん.....」
 こうた「優子!」
 優子はこうたと深い抱擁を交わして、それが30秒、50秒、1分と続いた。
 こうたは、優子の香水の香りに大人になった優子の匂いを確かめていた。
 優子はこうたの胸に顔をうずめて、こうたの胸の鼓動を感じていた。
 優子「会いたかったわ.....」
 こうた「俺もさ.....」
 しばらくの抱擁のあと、こうたは優子を室内へ背中を抱いてベッドに寝かせた。
 優子の体は、大きくしなやかな曲線美でこうたを魅了していた。
 優子「私が先にシャワー浴びてくるわ」
 こうた「ああ」
 言葉を交わさなくても意思を通じ合っている二人は、贅沢な夜を過ごすための準備をしていた。
 その間に、ゆうたはホテルのレストランにディナールームサービスを依頼した。
 夜の深みは優子への気持ちをさらに、アダルトに変えた。
 こうたの関心は彼女に移った。
 いよいよその優子がシャワーを終えて、寝室へ姿を表した。
 そのシルエットは、見事な女体の曲線美を見せていた。
 腰の丸い曲線はこの世に只一つの女性であることを、こうたに見せている証拠であった。

 こうた「じゃあ、俺が今度はシャワーを浴びる番だ」
 優子「そんなのいいわ」「いますぐ抱いて欲しいの」「私待てないわ」
 「お願いよ」
 優子はこうたに委ねる契約を交わした。
 こうた「わかったよ」
 こうたはその契約を承諾した。
 丸い大きな2つの丘は、こうたの美的感覚を満たすが如く存在している。
 末広がりの上半身は、理想的で健かみのある、女性の体型を彼に示していた。
 「10年前はあなたを諦めかけていたけど、やっぱり諦めることはできないわ」
 「奈津子との友情は切っても切れない女同士の友情だったの、でも今は違うわ」
 「大人の男性はあなたが初めてよ。あなたがその馴れ初めね。」
 「あなたはどうなの。私を抱いてどうするの。」
 彼の欲求は彼女の全てに注がれていた。
 「友達以上の関係をこれから築いていこうよ」
 「それは生涯続く二人の旅のようなものさ」
 「俺は、ちょっと寄り道していたんだ」
 「それって、ひょっとしたら......」
 「他に彼女ができていたの?」
 「年上の色気のあるアダルトな女性の方が魅力的なんでしょ?」
 「今の私はどう?」
 「10年前よりずっと大人で魅力的だよ」
 「そこは違うわ」
 「もうちょっと下」
 「そうそこよ」
 コメディアンにも似ているこうたのしぐさは、優子をにこやかにさせて、夜を長く楽しいものに変えていた。
 「はぁ、はぁ」と、彼女の息づかいは敏感な感覚をさらに高めていた
 「さらに、はぁ、はぁ、はぁ、」と高みを迎えるかのようである
 はとぽっぽにも似たリズムは、こうたを緊張から解きほぐして、軽い感情とともに夜をあっさりとした軽快な空間にしてくれた。
 しかし、高みへいく前に、またやすむ彼女であった
 それが何回も繰り返されて、思いのままにする彼女は夜の時間がすぎることなど気にならないのである
 その時間が長くも感じ、いつまでも続くかのようである。
 少なくても長く続けばいいと躊躇はなかった。
 高みを超えてそれを終える。
 その感情のハーモニーはふさわしいシンフォニーとなっていた。
 優子「傷つかなかった?」
 こうた「ううん全く大丈夫さ」
 優子「誰にも逃げないって誓う?」
 こうたはベッドの優子の側で土下座、正座して両手を白いシーツに着いて、
 こうた「この通り!!」
 「結婚してください!!」
 暫しの時間のあと.........
 優子「わかったわ!」
 「こうたと私の愛が失なわれないうちに結婚式を挙げましょう」
 優子は少しの曇りもない心でこうたを受け入れた。
 「この先海外へ行って離れたりするかもしれないけど、私はあなたを離さないわ」
 こうた「俺も君についていくよ。どこまでも続く星がある限り」
 その夜は、静かに更けていき、深い夜を超えて、二人は深淵な眠りに落ちていった。

 週が明けた月曜日の爽やかな朝を迎えたこうたは、社用車で、すみれ課長の自宅まで送迎のために移動した。
 今日からすみれはこの課を取り仕切る、課長として手腕を発揮することになる。
 こうたは社用車の運転席ですみれを待っていた。
 こうた「まだ来ないなぁ」
 するとすみれがいつもの紺色のスーツ姿で現れた。
 こうたは、タクシーを送迎車向けに作り替えた社用車の後部ドアを開けるため、足元のペダルを踏んで、自動ドアを開けた。
 すみれ「おはよう!!」
 こうた「どうぞ、早く乗って!!」
 いつもと変わらない、仲の良い同僚ぶりの姿は名コンビと呼ぶにふさわしい、名俳優かコメディアンというに近かった。
 すみれ「先輩!! 今日も頑張りましょう!!」
 こうたは、社用車を走らせた。
 こうた「今日の営業スケジュールは、午前が会社で営業会議、午後が営業ルート先を回ってのメンテナンスになります。」
 「今日からすみれさんのアシスタントに若い男性新入社員が就任します。」
 「彼にはなんでも教えてやってください。」
 「それから、私は、今日から電気電子システム部の部長代理になります。」
 こうたは、勤勉さと元気のいい逞しいその体つきで、電気電子システム部の部長代理というより責任の重い役割を任せられたのだ。
 こうたは彼の精悍な容貌と精力的な活動力でこの部を率いる推進力として将来が明るい好青年であった。
 すみれはこうたの育てた優秀な部下として、電気電子システム部電気電子システム課を率いるべく、空に広がる青空のように、明るいイメージでこの先を切り拓くパイオニアとして活躍していくのであった。
 車の窓の外には遠くに虹が綺麗に咲いていた。
 それは彼らのこの先を占うかのように色鮮やかに大きなアーチを描いていた。