ビブリオ俱楽部におまかせ!

「そういえば、寒川副部長は……」
「ほら、こんなのはどうだ?」
 
 本を何冊か持ってきていた寒川副部長が、机に何冊か広げる。
 そこにはどこかで見た名前があった。
 
「ろきぴの推し本と同じ作者が書いた本だ。ひとつ面白い話を見つけたなら、その作者をカギにして探すのもありだぞ」
「そっか!」
 
 闇雲に探すんじゃなくて、何かひとつ手がかりを見つけるってことか。
 さすが寒川副部長、あったまいい!
 ぱらぱらと数ページを流し読みしてみる。うん、面白いかも。
 
「どうだ?」
「あっ、ありがとうございます。面白そうです。ここから選んでみようかな」
「……そうか」
 
 いつも口をへの字にしている寒川副部長が、その時少しだけ――笑った。
 
「……え!」
「……あー、今のは、その」
 
 すぐにメガネを直すふりをして顔を背けてしまう。
 だけど、今の笑顔はインパクト大だ。
 
「寒川副部長、笑うとめっちゃイケメンですね!? いつもの怖さが薄まって、クールな感じがかっこいいです!」
「お、わかるか? 紙谷くん。そうなんだよ。博規は笑うとなかなかのイケメンなのさ〜。どのくらいかって言うと、俺とタメ張れるくらい?」
 
 キメ顔……というかドヤ顔で寒川副部長の隣に立つ、本多部長。
 いつもは太陽みたいな笑顔をふりまく本多部長の影で、静かにしかめっ面をしている寒川副部長だけど、もしこれがふたり揃って笑顔になったら……。
 
「うわ、ビブリオ倶楽部に女子が溢れる未来が見える……!」
 
 うちわとペンライトを持って、きゃあきゃあ騒ぐ女子たちの悲鳴が聞こえてくるようだ。
 ビブリオ倶楽部ならぬ、ビブリオライブが開かれるかもしれない。
 『もう図書室にはとどめておけないこの魅力!』とか『恋のページをめくりませんか?』とかのキャッチコピーが浮かんでくる。
 本多部長はファンサ精神旺盛だけど、寒川副部長はどうだろうか。
 いや、普段は控えめなタイプがたまーにやるちっちゃな指ハートとか、そういうギャップに女子は弱そうだ。
 
「ろきぴに思わぬライバルができてしまうかもな……」
 
 そうなった場合、俺はどっちを応援すればいいんだ。
 画面の向こうとこちら側。次元の壁に挟まれてサンドイッチされてしまう。
 うーん、と頭をかかえてうめいてしまう。
 
「おい、妄想はそのくらいにしておけ」
 
 頭をかかえていた手をぐいっと外される。
 顔を上げると、真顔の寒川副部長がこちらを睨んで……いや、見つめていた。
 
「ひょわっ」
「いつも怖い顔してて悪かったな」
 
 ぴき、と眉間のシワを谷折り状態にした、寒川副部長のド迫力。
 
 ……正直、チビるかと思った。
 いや、大丈夫だったけども! ちょっと危なかっただけだから!
 
「あはは、文くんたらナチュラルにいつも怖いって言っちゃったもんねぇ」
「仕方ない。副部長、いつも険しめ。アルプス山脈のごとし」
 
 笑いとばす乃部に、深く頷く今路。
 
 いや、それフォローになってないからな?
 
 そこで、ぱんぱんと手を叩く音がした。
 カウンターに寄りかかった本多部長だ。
 みんなの視線が集中したのを確かめてから、おもむろにケーキスタンドに手を伸ばすと、スコーン(のレプリカ)を口元に添える。
 ええと、アイドルの写真集を意識してるんですか、そのポーズ。