ビブリオ俱楽部におまかせ!

「ぼくのおすすめ、聞く?」
「わっ」
 
 そこで横からぬっと顔を出したのは今路だった。何やら薄くて大きな本をたくさん抱えている。
 薄い本か。読むのが楽そうでいいかも。
 本多部長や乃部の推し本も確かに面白そうではあるけれど、分厚いし文字がびっしりだしで、正直なところ、尻込みしてしまう。
 でも、今路のならとっつきやすいのかもしれない。
 そんな期待を抱きつつ、表紙を見る。海外の田舎っぽい風景だ。
 
「どれどれー」
 
 ぱらりとページをめくる。
 風車にチューリップの写真だ。
 
「オランダかな? 青空がきれいだ」
「うん。開放的」
 
 次をめくる。
 夜空の写真だ。
 
「すげえ。プラネタリウムみたいだな」
「……ん。こんな星空、すごく贅沢」
 
 次をめくる。走る犬のオシリ。
 次のページ。釣りをするお父さんと息子。
 次……。
 
「…………あのさ、今路」
「ん」
「……ひょっとして、これ、写真集?」
「そう」
 
 脱力した。いや、ここまでめくる前に自分で気づけっていう話なんだけどな!?
 
「俺は朝読書の本を探してるんだよ……これじゃ読書にならないじゃん」
「……? 写真集、立派な本。だって図書室に、ある」
「お、おう……」
 
 確かに朝読書のジャンルに指定はないけれど。写真集も本だけど。
 
「もーちょっとこう、文字が多めのやつで頼む」
「文字が多め……」
 
 宙を見上げた今路は、何かひらめいたらしい。
 すすす、と音もなく本棚に向かうと、また何か薄めの本を持ってきた。
 
「はい」
 
 今度は写真集じゃなさそうだ。
 
「いや、確かに文字は多いけれど!」
 
 お菓子のレシピ本だった。
 
「ホットケーキミックスで簡単に作れるクッキーにスコーンにパウンドケーキって……朝から甘い!」
「大丈夫。食事系も、ばっちりカバー。ハムチーズサンドにツナマヨマフィンも、ある」
「至れり尽くせりかよ。朝から腹の虫が大合唱間違いなしのやつだし! 朝からこんなの見てたら昼飯までもたない!」
 
 わっと突っ伏した俺の背中に、ぽんとあたたかい手が添えられる。
 
「ひるむな青少年。俺たちには早弁がある」
 
 見上げれば、本多部長がキメ顔で前髪をかきあげていた。ふぁさ、と髪がなびく。風もないのに。
 
「……いや、早弁って普通にそれ、叱られますって」
「……余計なトラブル、避けたい」
 
 俺と今路のド正論ツッコミに、本多部長は「だめかあ」と首を折った。
 
「お前ら、真面目すぎるんだよう〜」
「いや、部長が不真面目すぎなだけでは」
「……でも、このちゃらんぽらんなところ、結構、好き」
 
 ふふ、と今路がかすかに笑う。
 まあ、確かにこの明るさと強引さに助けられてるかもしれないな。
 
 ……早弁がバレて、担任に怒られるのは勘弁だけど。