「ええと、それで……」
話が途中になっていた。そうそう、推し本だ。
「昨日、ろきぴの配信を観て思ったんですけど、俺ってこう……本多部長にとってのスイーツ探偵みたいな、推し本、みたいなのがないなって。だから、朝読書の本を探しがてら、俺にとっての推し本を探してみようかと」
「へえ、いいんじゃないか?」
「というわけで。何かおすすめ、ありますか?」
そう、軽く聞いてみた。
軽い気持ちだったのだ。
だけど。
「うわ〜! なになにその面白そうな企画は! 文くんてほんとにワンダフル! ちょっと待ってね、今持ってくるからっ」
「そういうことなら、ぼくのおすすめも……ぜひ」
その場でバレリーナみたいに一回転した乃部と、垂直にぴょんと跳ねた今路が我先にと本棚へ向かう。
「……へ?」
「あー……あいつらに火をつけちゃったか」
寒川副部長が苦笑いしている。いったいどういうことだろう?
「んっふっふ」
「な、なんですか。その気味悪い笑い声は」
ぎよっとしてみれば、ソファに座った本多部長の声だった。
「紙谷くんのろきぴにかける情熱と一緒さ。推しについて聞かれたら誰しも嬉しくなって語り出すものだろ?」
「は……はあ」
そりゃあ、あの時、自分で恥ずかしくなるくらいろきぴについて語ったけど……。
「まあ、座りたまえよ。あいつらが戻ってくる前に、まずはこのスイーツ探偵バニラを読むといい。絶対紙谷くんもバニラワールドのとりこになるに違いないさ」
「そ、そうですか」
よくわからない迫力に押されて本を開く。さて、本多部長の推し本はどんな話なんだろうか――と思った時。
「おまたせ! これがロマンくんセレクトの推し本だよぉ」
どすん、という音と共に目の前に積まれたのは本の山。
何冊あるんだこれ!? これだけの重さを抱えてきて息ひとつ切らしてないの、すごすぎないか!?
「こ、これ全部?」
「そう! 特におすすめなのは『忍者.net』かな。現代にタイムスリップしてきた忍者が、テクノロジーを駆使して大活躍するお話! 読めば絶っ対、忍者になりたくなるでござるよニンニン」
忍者でおなじみ、両手の人差し指を立てて縦につなげる仕草をした乃部が、いたずらっぽく笑う。
「あとは『サムライカフェでカンパイ』もおすすめですな。拙者の舌をうならせる美食はいずこか……こうして美味旨太郎のあてどない旅が始めるのであった」
「なんかストーリー始まってるんだけど。つーか口調変わってるし!」
ロマンという名前と和風すぎる推し本のチョイスが、ものすごいギャップだ。
「ロマンって、歴史とか時代劇とか、そういうのが好きなタイプ?」
美味旨太郎のグルメレポートについて語るロマンに聞いてみると、ぱああっと顔を輝かせた。
「ザッツラーイトっ! 俺の名前、すごくインターナショナルな感じじゃない? その反動なのか和風が好きなんだよねえ……ハンバーグもデミグラスソースじゃなくて、和風玉ねぎソースが好きだし」
「あ、俺も和風パスタ好き! しょうゆとノリの組み合わせは正義っ」
「さっすが司部長! 話わーかるぅ」
いえーい、とハイタッチする本多部長と乃部。
いや、今は好きな食べ物の話はしていなくてだな……。
話が途中になっていた。そうそう、推し本だ。
「昨日、ろきぴの配信を観て思ったんですけど、俺ってこう……本多部長にとってのスイーツ探偵みたいな、推し本、みたいなのがないなって。だから、朝読書の本を探しがてら、俺にとっての推し本を探してみようかと」
「へえ、いいんじゃないか?」
「というわけで。何かおすすめ、ありますか?」
そう、軽く聞いてみた。
軽い気持ちだったのだ。
だけど。
「うわ〜! なになにその面白そうな企画は! 文くんてほんとにワンダフル! ちょっと待ってね、今持ってくるからっ」
「そういうことなら、ぼくのおすすめも……ぜひ」
その場でバレリーナみたいに一回転した乃部と、垂直にぴょんと跳ねた今路が我先にと本棚へ向かう。
「……へ?」
「あー……あいつらに火をつけちゃったか」
寒川副部長が苦笑いしている。いったいどういうことだろう?
「んっふっふ」
「な、なんですか。その気味悪い笑い声は」
ぎよっとしてみれば、ソファに座った本多部長の声だった。
「紙谷くんのろきぴにかける情熱と一緒さ。推しについて聞かれたら誰しも嬉しくなって語り出すものだろ?」
「は……はあ」
そりゃあ、あの時、自分で恥ずかしくなるくらいろきぴについて語ったけど……。
「まあ、座りたまえよ。あいつらが戻ってくる前に、まずはこのスイーツ探偵バニラを読むといい。絶対紙谷くんもバニラワールドのとりこになるに違いないさ」
「そ、そうですか」
よくわからない迫力に押されて本を開く。さて、本多部長の推し本はどんな話なんだろうか――と思った時。
「おまたせ! これがロマンくんセレクトの推し本だよぉ」
どすん、という音と共に目の前に積まれたのは本の山。
何冊あるんだこれ!? これだけの重さを抱えてきて息ひとつ切らしてないの、すごすぎないか!?
「こ、これ全部?」
「そう! 特におすすめなのは『忍者.net』かな。現代にタイムスリップしてきた忍者が、テクノロジーを駆使して大活躍するお話! 読めば絶っ対、忍者になりたくなるでござるよニンニン」
忍者でおなじみ、両手の人差し指を立てて縦につなげる仕草をした乃部が、いたずらっぽく笑う。
「あとは『サムライカフェでカンパイ』もおすすめですな。拙者の舌をうならせる美食はいずこか……こうして美味旨太郎のあてどない旅が始めるのであった」
「なんかストーリー始まってるんだけど。つーか口調変わってるし!」
ロマンという名前と和風すぎる推し本のチョイスが、ものすごいギャップだ。
「ロマンって、歴史とか時代劇とか、そういうのが好きなタイプ?」
美味旨太郎のグルメレポートについて語るロマンに聞いてみると、ぱああっと顔を輝かせた。
「ザッツラーイトっ! 俺の名前、すごくインターナショナルな感じじゃない? その反動なのか和風が好きなんだよねえ……ハンバーグもデミグラスソースじゃなくて、和風玉ねぎソースが好きだし」
「あ、俺も和風パスタ好き! しょうゆとノリの組み合わせは正義っ」
「さっすが司部長! 話わーかるぅ」
いえーい、とハイタッチする本多部長と乃部。
いや、今は好きな食べ物の話はしていなくてだな……。



