悪魔な義理弟《ボディーガード》~ヤンキー校最凶犬男子の独占欲が強過ぎる~




そして、数分後。

無事に発券が済み、櫂理君のところへ戻ろうとしたら、何やら見知らぬ若い女性二人が彼を囲んでいる。

席を外してから、ほんの少ししか経っていないのに。

一瞬の隙も逃さないなんて、相変わらずの凄まじいモテっぷりに愕然とする。

見たところ、大学生か社会人か。
遠目で見ても彼女達の体つきの良さが痛いほど伝わってきて、自分との格差に少し怖気付いてしまう。

だけど、このまま彼女達のいいようにさせては絶対にダメ。


「櫂理君」


そう自分を奮い立たせてから彼の名を強く呼ぶと、櫂理君は彼女達を無視して、足早に私のところへ戻ってきてくれた。


「あの人達誰?」 

「ただの害虫」

一応、知り合いかどうか確認してみたら、即座に彼らしい返答がきて、ほっと胸を撫で下ろす。

すると、突然櫂理君に肩を抱き寄せられ、私の頭に顔を擦り付けてきたので、彼らしからぬ反応に困惑してしまう。

「どうしたの?もしかして、あの人達に何か変なことされた?」

急に甘えてくるのは珍しいことじゃないけれど。なんだか少し様子がおかしくて不安げに尋ねてみたら、なぜかものすごく不満そうな目を向けられてしまった。

その視線の意味がよく分からないまま私達は劇場へ向かうと、座席に座った途端。櫂理君は当たり前のように手を繋いできて、私の肩に頭を置いた。


なんだろう。
家でテレビを見る時だって、たまにこうして甘えてくるのに。
櫂理君の距離感バグなんて、もはや空気を吸うかのごとく当たり前のことなのに。

場面が違うからなのか、なんだか凄く緊張してきた。


一方、櫂理君は普段と何も変わらない様子でスマホをいじっていて、私との温度差に段々と恥ずかしさが込み上がってくる。
 

とりあえず、落ち着かなきゃ。
私が意識してるってこと、櫂理君には絶対に知られたくない!


そう自分に強く言い聞かせているけれど、意思に反して心臓は全く落ち着こうとはせず。
なんでもいいから何かで気を紛らわそうと、私はさっき買ってきたポップコーンを一つ摘んだ。


「櫂理君、ポップコーン食べる?」

「うん。食べる」

そして、彼の方に差し出すと、櫂理君は嬉しそうな表情で小さく口を開けてくる。


……うん。これでいい。

やっぱり、弟らしい櫂理君がすごく落ち着く。


ポップコーンを差し出す度に、彼の可愛いさが爆発して、これまでの緊張が段々と和らいでいく。
 
気持ちを落ち着かせるために餌付けするなんて、少しの罪悪感が湧いてくるけれど。これで、ようやく普段通りの自分を取り戻せてきた気がして。

徐々にリラックスする自分に安心した私は、暫くポップコーンを食べさせていると、程なくして映画が始まった。