「ねえ、君達可愛いね」
突然背後から声を掛けられ振り向くと、そこには他校の制服を着た、いかにも好青年らしい高校生男子二人組が立っていた。
「ここは女子が殆どいないから全然期待してなかったけど、君達みたいなレベル高い子もいるんだ」
そして、爽やかな笑顔を振り撒くのは、うちの学校では絶対にいない小麦肌をした短髪のスポーツマンみたいな人。
顔はそこそこにイケメンで、軽い感じはあるけど、そこまでの嫌悪感を抱かないのは、この屈託のない笑顔が要因だからか。
私はもの珍しさに見入ってしまい、暫くその場で立ち尽くす。
「お前ら死にたいのか?」
すると、不意に私達の脇から長い腕が伸びてきた途端。
今にも人を殺めそうな目を向けながら、櫂理君は男子生徒の胸ぐらを掴んできた。
「櫂理君ダメ!」
間髪入れず私は慌てて彼の背中に抱き付くと、怒りのボルテージが一気に下がったのか。
呆気なく男子生徒から手を離してくれた。
「せっかくの美南の出会いを邪魔しちゃダメだよ。だから今日は我慢してくれないかな?お家帰ったら、いっぱい甘えていいから」
そして、こっそり耳打ちすると、険しかった櫂理君の表情は段々と緩み始めていく。
「約束だからな」
しまいには、目を輝かせながら笑顔を向けてきたので、一先ず私は胸を撫で下ろして首を縦に振った。
「あの、私達はBAR風カフェやってるので、もし良かったら遊びに来て下さい」
それから気を改めて。
美南のために勇気を振り絞り、宣伝も兼ねて男子生徒に笑顔で用意していたビラを配る。
「ほら美南も。絶好のチャンスだよ?」
一方、先程から全く反応がない彼女を不思議に思いながらも、さり気なく促してみた矢先だった。
「来たけりゃどーぞ」
興味など1ミリもないといった表情で、なんとも雑な扱いをしてくる美南。
「そ、それじゃあ気が向いたらということで」
その空気を読んだ男子生徒は苦笑いを浮かべながら、逃げるようにこの場を離れて行ってしまった。
「…………あの、美南さん?さっきの人達それなりに良い感じだったと思うんですけど」
まさかの自らチャンスを潰すという事態に驚きを隠せない私は、恐る恐る彼女の顔を覗いてみる。
すると、突然勢い良く肩を掴まれ、思わず軽い悲鳴を上げてしまった。
「どうしよう莉子。櫂理君達の顔に見慣れてしまったせいか、そこらの男子が芋にしか見えない」
「…………え?」
そして、至極真面目な顔で何とも残酷な事を言ってのける美南に、私は目が点になる。
「確かに今の二人は全然悪くなかったけど……ダメだ。櫂理君と肩を並べると、どうにも彼等が視界に入ってこない。ねえ、どうしてくれるの!?」
「は?俺のせいか?」
それから、言われた通り大人しく隣で静観していた櫂理君に食ってかかる美南さん。



