悪魔な義理弟《ボディーガード》~ヤンキー校最凶犬男子の独占欲が強過ぎる~



__翌日。



「宇佐美さーん、弟君来てるよー」


授業が終わり、昼休みが始まる頃。
俺はあるものを持って莉子の教室に顔を出した。

「櫂理君どうしたの?珍しいね」

俺の姿を見るや否や。小走りでこちらに駆け寄ってくる莉子の姿が刺激的で、そのまま抱き締めたくなる衝動をなんとか堪える。

「ごめん、莉子の体操着間違えて持ってきた。俺のそっちにある?」

そう言うと、俺は《《わざと》》取り違えた莉子の体操着を差し出し、困ったような表情をしてみせた。

「あ、多分あると思う。ちょっと待って……」

そして、慌てた様子で席に戻ろうとする莉子の手を、咄嗟に掴む。

「ねえ、橋本ってどれ?」

それから本来の目的を果たそうと、俺は目を光らせながら莉子にそっと耳打ちした。

「……あ、えっと…………あの窓際の一番前に座っている人」

不意に投げられた質問に戸惑いながらも、こっそり指をさして教えてくれた人物に俺は視線だけ向ける。


そこにいたのは、そこそこのイケメンで、短髪小麦肌のいかにもサッカー部員みたいな爽やか系な男。

莉子の言ってたとおり女子に人気なようで、昼休み始まって早々既に何人かに囲まれていた。


「莉子はああいうのがタイプなの?」

「分かんない。でも格好いいなって思う」

ふつふつと湧き上がる怒りを何とか表に出さないよう静かに尋ねると、恥じらいながら上目遣いをされ、その可愛さが余計苛立ちを助長させる。

そして、気付けば手が勝手に動き、俺は莉子の顎を無理矢理引き上げた。


「か、櫂理君!?みんなが見てるよ!?」


まさか公衆の面前でこんなことをされるとは、思ってもみなかったのか。莉子はかなり焦った様子で訴えてくるけど、この手を振り解こうとしないのは、やっぱり俺への甘さがあるから。

だから、その弱みに漬け込んで、俺は更に顔を近付ける。

「なあ、俺とそいつどっちが格好いい?」

それから、目線を合わせて俺は莉子の揺れる瞳を捉えた。


「う……。それは……」

「それは?」


俺から視線を逸らし、耳を真っ赤にしながら言い淀む姿を見る限りだと、答えは聞かずとも分かる。

けど、それをハッキリと口にするまでは絶対に逃さないと。俺は容赦なく追い討ちをかけた。


「…………櫂理君です」


そして、暫くしてから満足のいく答えを貰うことが出来、俺は満面の笑みを浮かべる。


やっぱり、莉子は俺に抗えない。


そう確信すると、あっさりと手を離し、莉子が体操着を取りに行っている間、何事もなかったように大人しくその場で待機した。

すると、どこからか視線を感じ、教室に目を向けた途端、例の男と目が合い、俺は軽く睨みつける。

それから、男はすぐ視線を逸らし、それ以降こちらを気にするような素振は一切見せてこなかった。