正しくない恋のはじまり

「藤井さん、今日は事務所にいなかったので。探してました」

「あぁ、調べながら仕事をする時はだいたいここです」

普通に答えてから、ふと思いとどまる。

「……探してたんですか?私を?」

「はい」

なにも深い意味はないみたいに、あっさり認めるものだから、
返事が遅れた。

そんなふうに言われる理由が、すぐには思いつかなかった。


どうしてだろう。
さっきまで一人だったはずなのに、急に空気が落ち着く。

青砥さんは私の向かいに立って、テーブルに広げていた資料に視線を落とした。

「……会議で触れていた差分、どう処理しますか?」

「あ、えっと……一応、別で整理しようと思ってて」

「そうですね。それがいい」

あの会議の違和感は、私だけが抱いたわけじゃなかった。
青砥さんも同じところが気になっている。
それは言葉にしなくても、二人の共通認識だということは分かる。