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会議室の空気は、いつもよりどこか重かった。
長いテーブルの中央に資料が並び、役員たちの視線がそれぞれのページに落ちている。
ページをめくる音だけが、静かな室内にやけに響いていた。
私は手元の資料に視線を落としながら、議事の流れを追っていた。
問題はない。
数字も、構成も、説明も。
昨夜までに何度もすり合わせて、整えたものだ。
取得予定地の買収費。
解体費と建設費。
開業後の想定賃料と投資回収。
誰が見ても引っかからないように。
余計な疑問が生まれないように。
───全部、整っている。
そのはずなのに。
ふと、視線を感じる。
顔を上げる前から分かる、あの感覚。
背中に触れられたわけでもないのに、そこだけ温度が変わるみたいな、嫌な気配。
ゆっくりと、視線を動かす。
テーブルの端。
他の誰とも違う温度で、ただ静かに座っている。
青砥さんだ。
こちらはさっきの会話の空気がまだ抜けないのに、彼はそうではなさそうだった。
視線が、ぶつかる。
彼がわずかに首を傾けていた。
なぜかこういうとき、彼から目だけは逸らせない。
なにかを知っている、その目が怖くて、逸らしたら負けな気がする。
一瞬で、呼吸が浅くなった。



