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時計も見ずに仕事をしていたけれど、少しずつ人が減っていくのだけは視界に見えていた。
それでも顔を上げない。
余計なものを遮断するように、自分のデスクに閉じこもっていた。
「まだ、帰らないんですか?」
ふと声をかけられて、向けた相手が私じゃないと思って振り向かずにいたら、
「藤井さん」
と名前を呼ばれた。
はっとして顔を上げると、青砥さんが立っていた。
オフィスはもう人がまばらで、照明だけがじわりと白い。
時計を見ると、定時はだいぶ過ぎていた。
───残っているのは、ほとんど私たちだけだ。
「時間、大丈夫なんですか?」
彼に言われて、ふっと集中していた身体が緩まる。
普段より少しやわらかいその話し方は、たぶん仕事じゃない。
「まだ、終電まで時間ありますから。大丈夫です」
うなずいて見せると、青砥さんはおもむろに私の隣の席に座り、持っていたパソコンを開いて資料を見せてきた。
「少し、よろしいですか。ストレスケースの件です」
「…あ、はい」



