正しくない恋のはじまり

そんな私をよそに、二人の話は続いていく。

「けど、顔は普通じゃない?」

「え、私は嫌いじゃないけど」

「人によるのかな?まあ、でも、なんか雰囲気で持ってくタイプではあるよね」

その言葉に、わずかに指が止まる。
…雰囲気。
確かに、そうかもしれない。

初めて会った時から、外部の人間とはいえ、ひときわ目を引いたのを思い出してしまった。


「あ、ねぇ、あかり」

名前を呼ばれて、顔を上げる。
いつの間にか、二人の顔がこちらに向いていた。

「一緒に仕事してるんでしょ?」

「青砥さんって、どんな人?」

“興味”、“好奇”、“うわさ”それ以外のなにものでもない、面白そうに私から話を聞き出そうとする二人の視線。


───どんな人、だなんて。
そんなの、私に分かるわけない。

「……普通、かな」

わいわいとしていたはずの給湯室に、一瞬の静けさが落ちる。
ああ、会話に馴染めていないかもしれない。自分でも、何を言ってるんだろうと思う。

「普通って?」

彼女たちは彼とは直接仕事のやり取りはしていないはずだ。それでもこんなに気にするのは、少し不思議でもあった。

「うーん、なんか…普通に、淡々と仕事をしてるっていうか」

言いながら、違うと思う。
“淡々と”、なんかじゃない。もっと、違う表現がないか探す。

「ものすごくちゃんと見てる人だな、とは思ってる」

気づけば、言葉が続いていた。

「細かいところも、ちゃんと拾うし。見るところが他の人と違うというか。良いところは褒めくれるし」

自分でも驚くくらい、すらすら出てくる。