正しくない恋のはじまり


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午後の打ち合わせは、小会議室で行われた。

いつもより人数は少ない。
営業と経理、それに青砥さん。 私は資料担当として同席していた。

会議室は、どこか物静かだった。


「東都アセットマネジメントとしての本案件ですが…」

この会議の主体は営業担当者だった。
彼がスライドを映す。

「本プロジェクトは、竣工後三年を目安にリファイナンス、もしくは一部売却を前提としています」

画面には、将来のキャッシュフローと出口想定が出されていた。
分かりやすくデータが載っており、資料も揃っている。

私は手元の書類とノートパソコンに目配せしていた。

「NOIベースでの資産価値最大化と、キャピタルゲインの確保を狙った設計です」

営業担当の言葉を聞きながら、ほんの少しだけ違和感が残る。

あまりにも、きれいすぎる。
これまでの、すこし前の私なら、気にも留めていなかった数字の並び。


小会議室はこじんまりしている、それ故によく見える。会議室での、それぞれの視線の動き方や仕草。

対角に座る青砥さんが、テーブルの上でペンをくるりと回した。そして、ふっと顔を上げた。傾けるように。

「…気になる点があります、よろしいですか?」