正しくない恋のはじまり


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打ち合わせは、小会議室で行われた。

参加しているのは、営業と経理、それに青砥さん。
私は資料担当として同席していた。


「東都アセットマネジメントとしての今期着地ですが」

営業担当の男性社員が室内にあるプロジェクターに映し出されたグラフを見ながら話す。

「こちらが現状の開発収支見込みです」

スクリーンに映るのは、プロジェクト全体の収支構成。
用地取得費、建設コスト、リーシング費用、そして想定賃料。

見慣れているはずの並び。
何度も整えてきた数字。
それなのに、今日はどこか、輪郭が曖昧に見える。


「現状の想定稼働率で推移した場合、第四四半期で利回りが下がります」

スライドを切り替える。

「そのため、リーシング費用の一部を来期へ振り替える案を……」

───いつも通りの流れ。
問題ないはずの説明。
きれいな数値が並んだ資料。

それなのに。
どこかで、なにかが噛み合っていない感覚が、消えない。