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午後からは、あかりちゃんをいつ誘うかという悩みと同時に、黒い大きな壁も気になり始めた。
黒い壁という名の、青砥佑正。
午後の会議を終えた俺は、席に戻るなり資料をまとめた。
……よし。
今だろ、今しかないだろ。
さっきの会議で出た論点を軽く振れば、自然に話しかけられる。
その流れで、さりげなく。
さりげなく、だ。
いけ!俺!
気合を入れて立ち上がる。
あかりちゃんのデスクまで、数歩。
「あかりちゃん、さっきの会議の件なんだけど───」
声をかけると、彼女が顔を上げる。
少しだけ驚いたように目を瞬かせて、それから、柔らかく笑った。
「はい」
いける。
この流れなら、絶対いける。
「例の案件、あのまま進めるとスケジュールちょっと厳しくなりそうでさ。もしよかったら、このあと少し───」
「その件ですが」
横から、声が入った。
心臓が、一瞬だけ止まる。
振り向かなくても分かる。
分かりたくなかったけど、分かる。
「リスクの洗い出しが不十分です。現状の工程表では、想定外対応のバッファが取れていません」
……来た。あの黒くてでかいの。
ゆっくり振り向くと、青砥が立っていた。
おい、マジでお前、いつからいた?気配消してただろ。



