正しくない恋のはじまり

時計の針が十三時を過ぎた頃、待てなくて立ち上がった。
どこを探すでもなく、廊下へ出る。

ばったり会えたらラッキー、彼女と仲のいい子がいれば探りも入れられる。

そんなことを考えながら、あてもなくうろうろしていた。


すると、どこかからあかりちゃんの声が聞こえてきた。

遠いけど、話し声がする。
なんの話なのか、まったく分からない。

キョロキョロしながら歩いているうちに、彼女の声は給湯室から聞こえてくることに気がついた。


───見つけた!

勢いをつけて突入しようとしたとき、ふと足が止まった。

「……だから私は、“禁煙してください”とは言ってません」

“禁煙”という、あかりちゃんとはイコールにならないセリフが聞こえてきたからだ。


「僕も別に、“禁煙します”とは言ってません」

「でも、してますよね?」

「吸ってないだけです」

「人はそれを、禁煙と呼ぶんです」

「いいえ。吸ってないだけです」


───なんの会話、これ?
男と話してる。誰だ、相手は?