正しくない恋のはじまり

俺は橋本颯真。

東都アセットマネジメントに就職して営業部に配属され、もう少しで十年。地味にコツコツ働いてきた。

俺より少しあとに入社してきた事業企画部の彼女のことが、ずっと気になっていた。


今日の俺は。一大決心をして出勤してきた。

───彼女を、さりげなく仕事終わりのデートに誘う!!

そう決意して身だしなみもいつも以上に整えてきた。


ワイシャツ、シワなし。
ネクタイの角度、完璧。
ヘアセット、ナチュラル。


まずは爽やかに、挨拶だ!


事務所のドアを押し開けると、彼女はもう自分のデスクに座って仕事を始めていた。

資料と照らし合わせながら真剣にキーボードを打つ姿。

ハーフアップにしたセミロングの髪に、細くて華奢な手首、パンツスーツが今日もよく似合う。

…はい、今日も可愛い。優勝!


「あかりちゃん、おはよう!」

元気よく声をかけると、あかりちゃんが顔を上げた。
俺を見つけて、控えめに笑う。

「おはようございます、橋本さん」


なんでこの子のこと、みんな放っておくんだろう。

最初にいいなって思った俺は、絶対に目の付け所がいいと思う。