正しくない恋のはじまり

不整合も、資金の流れも、承認の欠落も。
最初から把握していると、淡々と並べられる。

その冷静さが、余計に胸を締めつける。

それでも。

「だからと言って、あなたにやらせたわけではありません」

静かに続けられた。

「きっかけは作りました。ただ、選んだのはあなたです」

違和感を持ったことも。
調べると決めたことも。
止めると判断したことも。

全部。

「あなた自身の意思です」


逃げ場のない言葉だった。

言い返せないまま、息だけが浅くなる。

「……じゃあ、どうして黙ってたんですか」

やっと出た声は、小さかった。

青砥さんは少しだけ間を置く。

「確認したかったからです。あなたが、どうするのか」

最初から迷いがない。考える隙を与えないほどの即答だった。

「外から是正することもできました。でも、それでは残らない。───中で止めようとする人間がいなければ、意味がない」

静かに積み上げられる言葉が、逃げ道を塞いでいく。

「だから、見ていました」

どこで止まるのか。
それとも、踏み込むのか。

「結果として、あなたは踏み込みました」