正しくない恋のはじまり

「あなたが時間をかけて辿り着いた場所に、最初から立ってる人の、それ」

三浦さんは、完全に言い切ってみせた。口元は緩んだまま。


私は、というと。
言葉が出てこない。否定したいのに、根拠が足りない。
頭の中が、ゆっくりと崩れていく。

「……まあ、どうするかは、あなた次第ってところよね」

三浦さんはそう言って、私に背を向けた。

ドアに手をかけて、半分だけこちらを横目で見やる。

「ただ」

ほんの少しだけ止まる。

「隣にいる人がどこまで本気かくらいは、ちゃんと見た方がいいんじゃない?」

ドアが開いて、光が差し込んできた。

「じゃないと、取り残されるわよ」

私に食らわせるだけ食らわせて、彼女はそのまま出ていった。


ドアが閉まる。

部屋に残ったのは、さっきの言葉だけだった。

呼吸がうまく整わない。

胸の奥が、落ち着かないままざわついている。
信じたいと思っているのに、疑う理由だけが増えていく。

どうして、こんなふうに思ってしまうのか分からない。

その感情ごと、足元が揺らいだ。