フロアを抜け、人気の少ない廊下に入ると、周囲の気配が一気に遠のいた。
使われていない会議室の前で足を止め、三浦さんが自然な動作でドアを開ける。
「どうぞ」
中は薄暗かった。
カーテンが半分閉じられ、外の光が細く差し込んでいる。
一歩踏み入れたところで、背後でドアが閉まった。
二人しかいない閉ざされた空間。
思わず呼吸が浅くなる。
「座らなくていいよ。すぐ終わらせるから」
三浦さんは壁にもたれ、腕を組んだ。
きらりとゴールドのブレスレットが光る。
立っている場所は近すぎない。
けれど、落ち着かない距離感。それが逆に、こちらを動けなくさせた。
「で?」
彼女は軽く息を吐くように問いかけてきた。
「どこまで続けるつもり?」
最初から、核心だった。
「監査、止める気ないんだね」
「……止めません」
声は思ったよりも硬かった。
三浦さんは小さく笑って、一歩だけ距離を詰めてきた。
「そっかあ。───じゃあさ、」
視線がまっすぐ刺さる。
「あなた、ちゃんと見えてるの?この先、どうなるのか」
その言い方は問いというより、確認だった。
ゆっくりと言葉を置いていかれる。
「今回の件、もう単独の問題じゃないんだよ。ひとつ触れば、他も連れてくる。そういう構造でしょ?」



