正しくない恋のはじまり

「領域の問題ではありません」

青砥さんが先に言う。
そこへ、私の言葉が重なった。

「規定から逸脱しています」

ほとんど同時だった。
自分でも驚く。

でも、隣を見なくても分かる。同じものを見ている。
その事実が、怖いのに心強い。

三浦さんの目が、細くなる。

「なに、息合ってんのよ。不気味だわ」

吐き捨てるように残った言葉で、今度は明確に“圧”として目の前に差し出された。

「じゃあさ、もう一つ教えてあげようか」

声から、彼女特有の柔らかさが消える。

「この会社、うちの関連会社だよ。形式は別。でも実質は同じ。だから資金移動は問題ない」

言い詰まっていたはずの部長がすぐに乗っかってきた。

「そうだ、現場の裁量だ」

これで終わりだ、と言いたげな空気。終わらせたい、その気持ちの表れでもある。