正しくない恋のはじまり

納得のいかない顔で三浦さんが不満をあらわにする。

「どうして?必要あるでしょ」

「業務と関係がないからです」

「あるじゃない。私情を挟んでるわ」

「いいえ。違います」

しつこく食い下がる三浦さんに、青砥さんが短く断ち切る。
そして、こちらを見ないまま続けた。

「今はその話をしていません。それに、藤井さんをそういう形で評価する話でもない」


“守られている”というより、“支えてくれている”。
そう分かる言葉だった。

でもそれ以上に、ここではあくまで“仕事”として扱っている、という線も痛いくらいはっきり伝わってくる。

その正確さが、胸の奥に刺さった。


ここで部長が大きく舌打ちした。

「話を逸らすな」

「逸らしていません。先に逸らしたのはそちらですよね」


青砥さんはずっと一定の温度で話をしている。
揺れることなく、感情的になることもなく、事実だけを述べ続けていた。

その揺れなさが、向こう側にいる二人の波を浮き彫りにしている。