正しくない恋のはじまり

開いたままの画面。
ログ、契約書、承認履歴。

隠しきれていない。 全部、そのままそこにある。


「あー…。そこ、見ちゃったんだあ」

と小さく息を吐いた三浦さんの笑顔が、どこか冷たさを滲ませた。
私と青砥さんを斜めから見やっている。


見てしまったことは、否定できない。

何か言わなければ、言いくるめられるかもしれない。
考えを巡らせているうちに、言葉が喉で止まる。


三浦さんは怒らない。 責めもしない。
ただ、ゆっくりと距離を詰めてきた。

「藤井さんってさ、思ったより、踏み込むタイプなんだね」

足が動かない。

逃げようと思えば動けるはずなのに、 体だけが、ここに縫い付けられたみたいに固まっている。

「…これは、確認作業です」

かろうじて返すと、三浦さんは一度うなずいた。

「うん、そうだよね」

受け入れるように、肯定してくる。そんなこと、思ってもいないくせに。

そしてそのままの口調で続ける。

「……まあ、“そこまで”確認する必要がある案件かどうかは、ちょっと考えものよね」