正しくない恋のはじまり

不意に、ドアが開く音がした。


反射的に私と青砥さん、二人同時にそちらを見る。

「……あれ」

三浦さんだった。

ほんのわずかに驚いたような顔。 けれど、その目だけが、まったく笑っていない。

「こんなとこにいたんだね」

軽い声。 いつもと同じ、自然なトーン。
それがこの場には不自然で、心臓だけが先に反応してしまう。

「探しちゃった」

冗談みたいな言い方だった。
けれど、その言葉の奥にあるものを、うまくつかめない。

───どうしてここが分かったんだろう。

その考えが浮かんだ瞬間、背筋がひやりと冷える。
……見ていた、としか考えられない。


「……何か、ご用でしたか」

なんとか声を出すと、三浦さんはそのまま部屋に入ってきた。

後ろ手に、ドアが閉まる。
静かな音なのに、 空気ごと閉じ込められたみたいに重い。

私たちを追い詰めるように。逃がさない、とでも言うように。

「うん、ちょっとね」

彼女は軽く答えながら、視線がちらりとこちらのパソコンへ落ちた。