朝のオフィスは、何も変わらない顔をしていた。
白い照明と、規則的に鳴るキーボードの音。
コーヒーの匂いが、ゆるく空気に溶けている。
いつも通りのはずなのに、どこか遠い。
デスクにバッグを置きながら、私は視線を落とした。
───考えない。
そう決めたはずなのに、頭の奥に残っている。
あの声。
あの言葉。
逃げ場を塞ぐみたいな、あの目。
「藤井さん」
呼ばれて、はっとして顔を上げる。
「今日の報告会の資料、最新版ってどこにありますか?」
後輩の声が聞こえて、思考を即座に仕事へと切り替えた。スイッチを押すように。
「あ、共有フォルダの“役員報告会 最新”ってやつ。今朝、差し替えたから。それ見てくれる?」
口は勝手に動いてくれた。気持ちとは裏腹に、温度まで調節できている。 いつも通りに返せている。
大丈夫だ。仕事はできている。
……本当にできてる?
パソコンを立ち上げて、スケジュールを開く。
午前十時、役員報告会。
午後一時、再開発プロジェクト定例。
午後五時、外部コンサルとの打ち合わせ。
隙間のない予定。
それを見て、少しだけ安心する。埋まっている方がいい。
考える余白なんて、ない方がいい。
白い照明と、規則的に鳴るキーボードの音。
コーヒーの匂いが、ゆるく空気に溶けている。
いつも通りのはずなのに、どこか遠い。
デスクにバッグを置きながら、私は視線を落とした。
───考えない。
そう決めたはずなのに、頭の奥に残っている。
あの声。
あの言葉。
逃げ場を塞ぐみたいな、あの目。
「藤井さん」
呼ばれて、はっとして顔を上げる。
「今日の報告会の資料、最新版ってどこにありますか?」
後輩の声が聞こえて、思考を即座に仕事へと切り替えた。スイッチを押すように。
「あ、共有フォルダの“役員報告会 最新”ってやつ。今朝、差し替えたから。それ見てくれる?」
口は勝手に動いてくれた。気持ちとは裏腹に、温度まで調節できている。 いつも通りに返せている。
大丈夫だ。仕事はできている。
……本当にできてる?
パソコンを立ち上げて、スケジュールを開く。
午前十時、役員報告会。
午後一時、再開発プロジェクト定例。
午後五時、外部コンサルとの打ち合わせ。
隙間のない予定。
それを見て、少しだけ安心する。埋まっている方がいい。
考える余白なんて、ない方がいい。



