正しくない恋のはじまり

もう一度スクロールし、日付、金額と追っていく中で、振込先の欄で指が止まる。

見覚えがあるのに、契約書には載っていない名前だった。


「……どうして」

小さく漏れた声と同時に契約書を開き直し、見比べた。

同じ工事、同じ工程のはずなのに、一部の支払いだけが別の会社へ流れている。


心臓がゆっくりと速くなっていく。

その会社名に記憶が引っかかる。
会議室で見た、三浦さんの資料。

「……そんな、まさか」

何度も見直して、愕然とした。


一致する。
偶然じゃない。

これは、意図的に分けられている。
契約も、金も、流れも。


迷いながら画面を閉じかけて、手が止まった。

───『証拠を固めてください』

青砥さんの声がよみがえってきた。