正しくない恋のはじまり


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会議室には、すでに人が揃い始めていた。

営業、経理、開発。
それぞれが資料を広げ、なにやら低い声で確認をしている。


私は空いている席に腰を下ろし、手元の資料を開いた。

「では、始めましょうか」

進行役の声が落ちる。

「先日から入っていただいている外部コンサルの青砥さんにも、今回の会議は参加いただいています」

一瞬だけ、空気が揺れた気がした。
視線が、ざっと自然にそちらへ向く。

いつもと同じ、テーブルの端。
青砥さんは、何も変わらない顔でそこに座っていた。
資料に軽く目を落としながら、指先でペンを転がしている。

何もしていないのに、そこだけ空気の温度が違う。
理由は、分からない。


「では、前回からの進捗をお願いします」

「はい」と返事をした担当者が説明を始める。

取得予定地の買収交渉の進捗。
想定テナントの意向確認。
建設費見込みの再配分。

どれも、見慣れた言葉ばかりだった。

これといった問題はない。
資料も、整っている。

───そのはずなのに、私の中でくすぶる“なにか”。

思わず視界の端にいる青砥さんを意識するけれど、今日は目が合わない。
それだけで、少しだけ安心してしまう自分がいる。