正しくない恋のはじまり

「まず一点目。地盤調査の追加データから、一部区画で支持層の不均一が確認されています。設計上は対応可能ですが、施工段階でのコスト増と工期遅延のリスクが高い」

スライドが切り替わり、数値と断面図が映し出される。

「二点目。周辺住民の一部から、交通動線に関する再検討要請が出ています。現状は個別対応で抑えていますが、着工後に問題化する可能性があります」

丁寧なのに、逃げ道を一つも残さない説明だった。
青砥さんらしい。

「以上を踏まえて」

一拍。

「本件は、一度立ち止まるべきです」

空気が、はっきりと変わった。

進んでいくはずだった流れに、目に見えない壁が立ち上がる。

「計画前提が現状と乖離しています。このまま進める場合、後工程でのリスクが顕在化する確率が高い」


その言葉を、誰もすぐには受け取れない。

青砥さんが言っていることは、正しい。
悔しいほど、全部正しい。

───でも。