思いもしなかった答えに、息が止まりそうになる。
「……じゃあ、なんで」
返した自分の声は、さっきより震えていた。
言いたいのに、その先が続かない。
青砥さんの視線が、ほんの一瞬だけ逸れて、それから戻る。
「出しても、意味ないからです」
その一言が、いちばん正直だった。
「仕事中に出しても、邪魔になるだけなので」
淡々としているのに、きちんと抑えている。
言葉では“邪魔になる”と言っているのに、そこにちゃんとある。
「……なんで、そういう言い方するんですか」
思わず、こぼれた。
青砥さんの眉が、わずかに動く。
「なにがですか?」
「……私だけみたいで」
言った瞬間、激しく後悔した。
これじゃまるで、と頭の中で言いかける。
でももう、引っ込められない。
青砥さんが、一歩だけ近づいた。
たった一歩。
それだけで距離が一気に縮まる。
「違います」
低く、まっすぐな声だった。
「あなたより、出さないだけです」
その一言で、全部が揺れる。
視線が絡んで、離せない。
昨日とほとんど同じ距離。
でも、触れない。触れられない。
そのぎりぎりだった。
「……戻りましょう」
先に引いたのは、青砥さんだった。
ふっと距離が戻り、今さっきの空気だけが、そこに残る。
「……はい」
返事が少し遅れたけれど、整えられるほど器用でもなかった。
まだ揺れている胸の奥を知られないように、私は早くこの場を立ち去ろうとドアノブに手をかける。
すると、後ろから
「……昨日のこと」
と聞こえて、また胸の奥がざわついた。
振り返ると、青砥さんがこちらを見ている。
いつもよりほんの少しだけ、やわらかい目で。
一瞬、足が止まる。
「なかったことにはしません」
それだけ言って、彼は私より先にドアノブを引いた。
「……じゃあ、なんで」
返した自分の声は、さっきより震えていた。
言いたいのに、その先が続かない。
青砥さんの視線が、ほんの一瞬だけ逸れて、それから戻る。
「出しても、意味ないからです」
その一言が、いちばん正直だった。
「仕事中に出しても、邪魔になるだけなので」
淡々としているのに、きちんと抑えている。
言葉では“邪魔になる”と言っているのに、そこにちゃんとある。
「……なんで、そういう言い方するんですか」
思わず、こぼれた。
青砥さんの眉が、わずかに動く。
「なにがですか?」
「……私だけみたいで」
言った瞬間、激しく後悔した。
これじゃまるで、と頭の中で言いかける。
でももう、引っ込められない。
青砥さんが、一歩だけ近づいた。
たった一歩。
それだけで距離が一気に縮まる。
「違います」
低く、まっすぐな声だった。
「あなたより、出さないだけです」
その一言で、全部が揺れる。
視線が絡んで、離せない。
昨日とほとんど同じ距離。
でも、触れない。触れられない。
そのぎりぎりだった。
「……戻りましょう」
先に引いたのは、青砥さんだった。
ふっと距離が戻り、今さっきの空気だけが、そこに残る。
「……はい」
返事が少し遅れたけれど、整えられるほど器用でもなかった。
まだ揺れている胸の奥を知られないように、私は早くこの場を立ち去ろうとドアノブに手をかける。
すると、後ろから
「……昨日のこと」
と聞こえて、また胸の奥がざわついた。
振り返ると、青砥さんがこちらを見ている。
いつもよりほんの少しだけ、やわらかい目で。
一瞬、足が止まる。
「なかったことにはしません」
それだけ言って、彼は私より先にドアノブを引いた。



