正しくない恋のはじまり

もしここで一人で進んだら、正しい結果になったとしても、どこかが決定的にズレる。
そんな気がして怖くなってしまった。


分からないまま、突き進むのは違う気がする。

───じゃあ、どうするの?
彼が時間を作ってくれたとして、もしも十分な証拠を見つけ出せなかったら…。


答えが出ないまま、時間だけが過ぎる。
目を閉じて、考える。
考えている時間が、やけに長く感じた。

まるで解けない難問に、長時間挑んでいるみたいだった。


「……なんで、いなくなってくれないの…」

考えなくちゃいけないのに、ずっと頭から離れない。
こぼれた声は、小さくて、誰にも届かないはずだった。

どうしても片隅に存在する、彼の姿。


「───それ、僕も思ってます」

急に背後から落ちてきた声に、息が止まりそうになった。

振り返る前に分かる。

いる。
さっき、帰ったはずの人が、そこにいる。


「……なんで、戻ってきたんですか」

振り返って、鞄を持ったままの青砥さんに言った。

責めているはずの言葉なのに、声が震えるのは、責めたいからじゃない。


来てほしくなかった。
こんな姿を、見てほしくなかった。

会いたくなかった。

……違う。


本当は───来てほしかった。