正しくない恋のはじまり

その場に、一人残される。
しばらくの間、そこに座ったまま動けなかった。
揃えている足元を見下ろす。

手も足も、わずかに震えていることに気づいた。
ゆっくりと息を吐く。


……大丈夫、でいい。

そう思った瞬間、
まったく大丈夫じゃないことに気づく。

胸の奥に、彼の言葉が残ったまま、消えなかった。




••┈┈┈┈••

デスクに戻っても、しばらく何も手につかなかった。
────藤井あかりとして、崩れてはいけないのに。


パソコンの画面を開いたまま、同じ資料を何度も見ている。

内容は頭に入っているはずなのに、一行も読めていない。
指先が、まだ少し震えていた。


考える必要はない。
そう思う。思うだけで、まったく整理できていない。