正しくない恋のはじまり

もう一度、指先に力を入れようとした、
……そのとき。


自分の指の上に、もうひとつ、重みが乗った。


反射的に、息が止まる。

視線を落とすと、マウスを握る自分の手の上に、重なる手。

青砥さんの手だった。

大きい、とか。
温かい、とか。
そんなことを考える余裕はない。

ただ、“動けなくされた”という事実だけが、はっきり分かる。


「……なに、して」

声がかすれて、うまく出ない。
それでも、なんとか言う。
言わないと、この状況に耐えられない。

「離してください!」

「それ、今じゃない」

上から落ちてくる声。

顔は見えない。でも、低くて静かなその声は、はっきりと止めていた。

「やめてください!今しかないんです!」

ほとんど反射で返す。

「いま出さなかったら、もう……」

続けようとして、言葉が詰まってしまった。

分かっている。“もう”、の先を。