正しくない恋のはじまり

私はため息をついたあと、一度手を止めて立ち上がった。
コーヒーでも入れて、頭を冷やそうと思った。


給湯室でコーヒーの香りを嗅ぎながら、いつから私はこうなったのかを考えていた。

不意に思い出す、青砥さんとの初めての出会い。


『外部コンサルとして参りました、青砥佑正と申します』

そんな人が関わってくるんだ、くらいの軽い気持ちで挨拶したあの日。
直後におこなわれた会議のあと、廊下で前置きなしに尋ねてきた、あの言葉。

『藤井さんは、どこまで把握してるんですか?』

ただただ怖いと思っていた、最初の頃。


私はコーヒーを飲んで、気持ちを落ち着けた。

自分のやっていることが正解かどうかは、今はちゃんと判断はできない。
私だって迷いながらここまで来た。

引き返すこともできるかもしれない。
それでも、正しくないことが正解とは思えなかった。