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フロアの照明が、ひとつ落ちていた。
定時を過ぎたオフィスは、音が少ない。
キーボードの打鍵と、遠くで鳴る電話の余韻だけが、ぽつぽつと残っている。
私は画面に向かったまま、指を止めた。
最初は真っ白だった、“_check”の中身。
今は違う。白いセルの中に、黒い文字が並んでいた。
───引き返せないな。
ふと、そんなことを思う。
ずっと、いつからかどこかで感じていた。
“見えていない”と思っていたし、そう信じていた。
そして、疑うこともしないで過ごしてきた。これからもそうして働いていくんだと思っていた。
今回の“これ”も同じ。最初は、ただの違和感だった。
数字が合わない気がして、でも確信はなくて。
それでも、残した。
“見ないことにしない”ためのファイル。
気づけば、そこに並んでいるのは“根拠”になりかけている断片ばかりだ。
【日照条件:隣接建物高さの不整合(8.0m / 実測9.8m)】
【搬入経路:前面道路4.0mに対し4t車→余裕なし】
【外構費:一式計上→内訳不明(後調整余地)】
カーソルが点滅している。
追加すべき項目は、まだまだある。
───本当にこれでいいのだろうか。



