正しくない恋のはじまり

「……」

何も言えない私を見て、三浦さんはふっと笑った。

「藤井さんって、本当に真面目なんだね」

それは褒めているようで、どこか線を引かれているような言い方だった。

「大丈夫よ。……ちゃんと、着地させるから」

そう言って、彼女は少しだけ身を引いた。
その“ちゃんと”が、何を意味しているのか。聞けなかった。

三浦さんはそのまま踵を返して、軽い足取りで去っていく。
香水の残り香だけが、少し遅れて残る。


私はゆっくりと、画面に視線を戻した。
そこに並んでいるのは、ただの数字。

でも、もう、ただの数字には見えない。

“どうにでもできる数字”。
“そうなるように置かれた数字”。

見え方が変わってしまった。気づいてしまった。
見えないふりをしていたはずなのに。そんなふうに捉えられなくなっていた。