正しくない恋のはじまり

疑惑が、輪郭を見せ始めていた。

これは、揃えてないんじゃない。
“揃えてるところと、揃えてないところ”がある。

都合のいい部分だけ。


心臓の鼓動が、少しずつ速くなってきた。

私は最後に、見積もりシートを開いた。

【外構工事費:¥3,200,000】

…安い。
どう考えても、安すぎる。

内訳を見る。

【舗装:一式】
【植栽:一式】
【フェンス:一式】

───全部、“一式”。

詳細がない。後で、どうにでもできる書き方。

……気づけば、呼吸が浅くなっていた。

道路幅、日照条件、外構費。

全部が少しずつズレている。
でも、そのズレ方が……似ている。


「……これ、」

言葉が、喉で止まる。

確証はない。でも。そうだとしても。
偶然にしては、揃いすぎている。


コンコン、と軽くデスクが叩かれた。

びくっとして顔を上げる。
誰かが近くにいるなんて気づきもしなかった。

「……あ」

そこにいたのは、三浦さんだった。
いつの間にか、すぐ横に立っている。

「珍しいね、そんなに真剣な顔して。なに見てたの?」

いつもと同じ、綺麗な笑顔。そして、やわらかい声。
それが逆に、怖さを増幅させる。