クラスの透明人間は、夜を駆ける怪盗でした


「うん! 去年、新体操部の先輩にお母さんからもらった大事なキーホルダーを隠されたとき、取り戻してくれたの」

凛ちゃんは、照れくさそうに微笑んだ。

そうだ……あのときは、ロッカーの鍵がなかなか開かなくて、苦労したんだった。

依頼文に名前は書かれていなかったけど。あれ、凛ちゃんだったんだ。

「すごい……ね」

できるだけ表情を変えないようにする。ただ、指先だけがぎゅっと本の背表紙を握り締めた。

自分のしたことが、目の前の誰かをこんなふうに笑顔にしている。その事実に、言葉にならない嬉しさがこみ上げてきた。

「美月ちゃんも、何か困ったことがあったら怪盗ムーンに頼んでみなよ。きっと助けてくれるから」

凛ちゃんが明るく言う。

「……うん」

「あのね、美月ちゃん」

凛ちゃんが、急に真剣な顔になった。

「私、美月ちゃんともっと仲良くなりたいな」

え?

びっくりして、私は凛ちゃんを見上げた。ひまわりみたいに明るい笑顔が、すぐそばにある。

「どうして……?」