クラスの透明人間は、夜を駆ける怪盗でした


放課後。図書室に行くと、クラスメイトの春野(はるの)(りん)ちゃんが本を読んでいた。

凛ちゃんは明るくて、新体操部のエースで、クラスの人気者。ポニーテールが似合う、私とは正反対の、光の世界の住人みたいな人だ。

「あ、美月ちゃん!」

凛ちゃんが顔を上げ、花が咲いたような笑顔を見せた。

「図書委員の仕事、今日も頑張ってるね」

「うん……仕事だから」

私はうつむいたまま答える。凛ちゃんの笑顔はまぶしくて、まっすぐ見るとなぜか居心地が悪くなる。

まさか、凛ちゃんみたいな人に声をかけてもらえるなんて思わなかった。

「ねえねえ、怪盗ムーンって知ってる?」

本を整理する手が、一瞬だけ止まりそうになった。

「う、うん、知ってるよ」

「すごいよね! 昨日も三年生のミサンガ、取り戻したんだって。朝、莉奈先輩が泣いてるの見ちゃった」

凛ちゃんは、瞳をキラキラさせて続ける。

「あのね、実は私も怪盗ムーンに助けてもらったことがあるんだ」

「え、そうなの?」

思わず顔を上げた。