クラスの透明人間は、夜を駆ける怪盗でした


カチ、カチ、カチ……カチャリ。

乾いた音がして、鍵が開いた。やった!

ガサゴソと、引き出しの奥を探る。書類、ボールペン、ホイッスル──。

あった!

赤と青と黄色の糸で編まれた、ミサンガ。糸の端は少しほつれて、色もすこし薄くなっている。それが、長い間大切にされてきた証拠に見えて、のどの奥がぎゅっと熱くなった。

これが、莉奈先輩の宝物。

私はそれを、そっとカバンの中にしまった。

机の上に、月のマークが描かれたカードを置く。

筆ペンで書いた文字。

『奪われた想いは、取り戻しました──怪盗ムーンより』

その瞬間──廊下から足音が聞こえた。

まずい、警備員さんだ。予定より早い! まだ二十分しか経ってないのに……。

慌てて、窓へ向かって走る。

コツコツ……と、足音が近づいてくる。だめだ、間に合わない!

ドアノブが回る金属音が聞こえた瞬間、私は窓のふちを蹴って外へと飛び出した。

ドサッ。

着地した瞬間、右足首に鈍い痛みが走る。

「……っ!」

私は唇を噛んで、声を殺す。大丈夫、まだ走れる。

校舎の影に身を隠すと、職員室の電気がパッとついた。警備員さんのシルエットが窓に映る。

開いたままの窓を、じっと見ている。もしかして、気づいた……?

私はじっと息を殺した。一分、二分──。

やがて電気が消えて、足音が遠ざかった。

ふう……どうにか逃げ切れた。

右足を引きずりながら、私は校舎の裏手に向かった。