「……」
御影先輩は無言のまま、懐中電灯をゆっくりと動かした。
光の端が、私のつま先のすぐ手前で止まった。
一秒、二秒。
「……異常なし」
ひとこと呟いて、御影先輩はドアを閉めた。足音が遠ざかっていく。
私はその場にへたり込みそうになった。壁に背を預けたまま、ゆっくりと息を整える。手のひらが、じっとりと濡れていた。
はあ、心臓に悪いよ……。
今夜、御影先輩はまた見回りルートを変えてきた。次は、もっと読めない動き方をしてくるだろう。
翼くんの情報がなかったら、今頃つかまっていたかもしれない。
*
翌朝。私は翼くんに、昨夜撮影したレシートの写真を見せた。
「修理店のレシート……これは、動かせない証拠だね」
「うん。のぞみちゃんの証言と合わせれば、先生も動くはずだと思う」
「七瀬さん、一人で行くの?」
「……一緒に来てほしい」
翼くんが、目を見開いた。
「私一人だと、先生に信じてもらえないかもしれない。二人のほうが、説得力があると思うの」
翼くんは一秒だけ間を置いて、頷いた。
「わかった」



