クラスの透明人間は、夜を駆ける怪盗でした


「……」

御影先輩は無言のまま、懐中電灯をゆっくりと動かした。

光の端が、私のつま先のすぐ手前で止まった。

一秒、二秒。

「……異常なし」

ひとこと呟いて、御影先輩はドアを閉めた。足音が遠ざかっていく。

私はその場にへたり込みそうになった。壁に背を預けたまま、ゆっくりと息を整える。手のひらが、じっとりと濡れていた。

はあ、心臓に悪いよ……。

今夜、御影先輩はまた見回りルートを変えてきた。次は、もっと読めない動き方をしてくるだろう。

翼くんの情報がなかったら、今頃つかまっていたかもしれない。



翌朝。私は翼くんに、昨夜撮影したレシートの写真を見せた。

「修理店のレシート……これは、動かせない証拠だね」

「うん。のぞみちゃんの証言と合わせれば、先生も動くはずだと思う」

「七瀬さん、一人で行くの?」

「……一緒に来てほしい」

翼くんが、目を見開いた。

「私一人だと、先生に信じてもらえないかもしれない。二人のほうが、説得力があると思うの」

翼くんは一秒だけ間を置いて、頷いた。

「わかった」