同じ日の夜。私は三年生のロッカーエリアに向かった。
御影先輩の見回りを避けながら。
翼くんが昨日、部活の帰りに合唱部の同級生へさりげなく話を聞いてくれていた。
音楽準備室に入っていたのは、三年四組の松田という先輩だと分かった。
最近、部活の練習中に楽器を壊してしまって、青い顔をしていたという。
仮説が、現実に近づいた気がした。
私はロッカーの前に立って、鍵を開ける。指先に神経を集中させて。
カチャ。
扉を開けると、教科書、ノート、着替えがあった。さらに奥に手を差し込んで確かめると──折り畳まれた紙が指に触れた。
引き出すと、楽器修理店のレシートだった。
『品名:トライアングル 持込修理 受付』
日付は、紛失から三日後。金額は修理代として千二百円。
やっぱり。壊してしまって、修理に出そうとしていたんだ。
きっと、そのまま名乗り出ることができなくなって、さくらちゃんが責められているのを、ただ見ていた。
この人も、悪いことをしたかったわけじゃないんだ。ただ、正直に言うのがこわかっただけなんだ。のぞみちゃんと、同じように。
スマホでレシートを撮影して、ロッカーを元通りに閉める。
「!」
そのとき──廊下から足音が聞こえた。
革靴の音。リズムが速い……御影先輩だ!
私は素早くロッカーの列の端に体を滑り込ませ、息をひそめた。
ドアが開き、懐中電灯の光が、コンクリートの床を照らしながら近づいてくる。
光は私のほうへ。あと数センチ──光の輪が私の靴に触れそうになった瞬間、私は反射的に目を閉じた。
ドクン、ドクン……。
心臓の音が、静かな廊下に響き渡っているんじゃないかと思うほど、うるさい。
お願い、止まって──。



