「そう。でも、それだけじゃ足りない。先生が信じてくれる、物的な証拠もほしい」
私はノートを取り出して、考えをまとめていった。
「トライアングルを持ち出した三年生の男子……どうして盗んだんだろう」
「売るつもりとか?」
「それだと、わざわざ学校の備品を選ぶ理由が薄いんだよね」
私はペンを走らせながら続ける。
「もし練習中に壊してしまって、先生に怒られるのが怖くて、こっそり修理に出そうとしたなら──」
翼くんが、目を見開いた。
「楽器の修理って、専門店に持っていくことが多いよね。そうしたら、お店でもらう『受付の紙』とかがあるはずで……」
「それが、本人のロッカーにあれば──」
「先生に、犯人はさくらちゃんじゃないって証明できる!」
翼くんは少し間を置いて、私をじっと見た。
「でも、これはまだ『予想』だよね。本当に修理屋さんに行ったかどうか、証拠を見つけないと」
「うん。だから今夜、私がロッカーエリアに行く」
翼くんは、しばらく私を見ていた。
「七瀬さん、俺に別のことをお願いしたいって顔してる」
「……へへ、バレた?」
「なんとなく」
私は翼くんの目をまっすぐ見つめた。
「中島のぞみちゃんと、お話してほしいの。彼女が先生に本当のことを言えるように、背中をそっと押してあげてほしいんだ」
翼くんの表情が、かすかに揺れた。
「え、俺が? なんで?」
「翼くんは、前の学校で友達を守ろうとして動いた人だから」
翼くんの指先が、ノートの端をわずかに押さえた。
「翼くんなら、のぞみちゃんの『こわい』って気持ちを、だれよりもわかってあげられると思うの」
翼くんは、しばらく黙っていた。
「……分かった。やってみる」
翼くんが、静かに頷いた。



