クラスの透明人間は、夜を駆ける怪盗でした


翌日。図書室の『星の王子さま』に、新しい手紙が挟まっていた。

周りを確認してから、手紙を開く。


『怪盗ムーン様へ。

合唱部の一年生・木村さくらのことを助けてください。

先週、音楽準備室から備品のトライアングルが一つなくなりました。

顧問の高田先生は、さくらちゃんが最後に片付けを担当していたことから、「あなたが管理をしていたはずだ」と言って、さくらちゃんを強く責めました。

でも、さくらちゃんは盗んでいません。

私は見ていたんです。あの日の放課後、三年生の男子生徒が音楽準備室に入っていくのを。

顧問の先生が職員室に呼ばれて席を外したあと、その男子生徒が部屋から出てきたとき、カバンが明らかに膨らんでいました。

だけど私は、三年生の先輩が怖くて、先生に言えませんでした。

さくらちゃんは毎日、先生に謝り続けています。「私のせいでごめんなさい」って。

さくらちゃんは、何も悪いことをしていないのに。

先生に「犯人はさくらちゃんじゃない」と証明してあげてください。

怪盗ムーンなら、きっとやってくれると信じてます。

──合唱部二年 中島のぞみ』


手紙を読み終えて、私はもう一度最初から読んだ。

今回は、物を盗むんじゃない。誰かにひどいことをされている状況を、正す話だ。

でも、どうやって?

証拠がなければ、先生は動かない。

目撃者がいる。中島のぞみちゃんが「見ていた」と言っている。

問題は、彼女が怖くて動けないでいること。それは、物を取り戻すよりもずっと難しい。

私はその夜、翼くんにメッセージを送った。

『明日の放課後、図書室に来てほしい。相談があるの』

すぐに返信が来た。

『了解。行く』



翌日の放課後。図書室で私は、翼くんに手紙を見せた。

翼くんは黙って読み終えてから、ゆっくりと顔を上げた。

「証言者がいるけど、怖くて動けない。……だから、その子を動けるようにする、ってこと?」