御影先輩の鋭い目が、私を捉える。まるで何かを見抜こうとするような──。
「ちょっと、通りかかっただけで……」
「そうですか」
御影先輩は、私をじっと見つめた。三秒、四秒。それから口を開いた。
「この辺りは放課後、人が少ないから。気をつけて」
それだけ言って、御影先輩は生徒会室に戻っていった。
足音が遠ざかってから、私はようやく息ができた。
危ない。翼くんが言っていた通りだ。これからは、もっと慎重に動かないと。
*
その日の放課後。私は翼くんを図書室に呼んだ。
「御影先輩に、廊下で捕まった。正体はバレてないけど……顔を覚えられてた」
翼くんの眉が、かすかに寄る。
「夜のルートを変えたほうがいい。先輩に知られているルートは、しばらく使わないで」
「うん。翼くんのノートを見て、別の道を三ルート考えてある」
「さすが」
翼くんが、ほっとしたように息を吐く。
「……心配、してくれてるの?」
「当たり前でしょ。クラスメイトだし」
翼くんはさらっと言って、本棚のほうを向いた。横顔が、夕日で少し赤く見えた。



