クラスの透明人間は、夜を駆ける怪盗でした


御影先輩の鋭い目が、私を捉える。まるで何かを見抜こうとするような──。

「ちょっと、通りかかっただけで……」

「そうですか」

御影先輩は、私をじっと見つめた。三秒、四秒。それから口を開いた。

「この辺りは放課後、人が少ないから。気をつけて」

それだけ言って、御影先輩は生徒会室に戻っていった。

足音が遠ざかってから、私はようやく息ができた。

危ない。翼くんが言っていた通りだ。これからは、もっと慎重に動かないと。



その日の放課後。私は翼くんを図書室に呼んだ。

「御影先輩に、廊下で捕まった。正体はバレてないけど……顔を覚えられてた」

翼くんの眉が、かすかに寄る。

「夜のルートを変えたほうがいい。先輩に知られているルートは、しばらく使わないで」

「うん。翼くんのノートを見て、別の道を三ルート考えてある」

「さすが」

翼くんが、ほっとしたように息を吐く。

「……心配、してくれてるの?」

「当たり前でしょ。クラスメイトだし」

翼くんはさらっと言って、本棚のほうを向いた。横顔が、夕日で少し赤く見えた。