クラスの透明人間は、夜を駆ける怪盗でした


翌日、昼休みのことだった。

生徒会室の前を通りかかると、半開きのドアの向こうから声が聞こえた。

「怪盗ムーンを、必ず見つけ出す」

私の足が止まる。

「学校のルールをめちゃくちゃにする奴は、許せない。文化祭までに正体を突き止める」

生徒会長の、御影玲央(れお)先輩の声だった。

御影先輩は三年生で、成績優秀、スポーツ万能。真面目で正義感が強いと評判だ。

そっと、ドアの隙間から中を覗くと、肩にかかるほどの黒髪を首元でひとつに結んだ、きりっとした雰囲気の先輩の姿が見えた。

黒板に貼られているのは、校内の地図。そこには、赤いペンで線が引かれていた。

あの赤い線のところ、私が怪盗ムーンとして通ったルートだ。

背筋が冷たくなる。この人、本気だ。

その場を離れようとした、そのとき──。

「そこで立ち聞きとは、感心しませんね」

背後から声がした。

振り向くと、御影先輩が立っていた。鋭い目。まるで心を見透かすような視線。

「あ、あの……」

「君、二年生の七瀬美月さんですね」