翼くんに秘密を打ち明けてから一週間。
九月が終わり、十月に入ると、学校は一気に文化祭ムードになった。
廊下には色とりどりのポスターが躍り、絵の具とボンドのにおいが鼻をくすぐる。
『ようこそ、ご主人様♡ 三年五組メイドカフェ』
『悲鳴続出! 二年二組お化け屋敷』
『青春、全力! 一年三組ダンス発表』
「なあなあ。BGMは、もっと怖い感じにしようぜ!」
「血のり足りなくない?」
休み時間になるとみんなが机を突き合わせ、出し物の準備で声を弾ませている。
ちなみに、私のクラスの出し物はお化け屋敷だ。
私は、自分の席でひとり静かに本を読んでいた。
文化祭……。お祭りの騒がしさは、あまり得意じゃない。
それでも今年は、少しだけ違う気がしていた。
*
昼休み。クラスのみんながお弁当を広げる時間。
私の班は、いつも私の席だけ少し離れている。
「いただきまーす!」
楽しそうな声が響く。
今日のお弁当はハンバーグ。お母さんが作ってくれたものだ。
冷めてもふっくらしていて、美味しい。でも、一人で食べると少しだけ味気ない。
「美月ちゃん」
ふいに声をかけられて顔を上げると、凛ちゃんがお弁当を持って立っていた。



