クラスの透明人間は、夜を駆ける怪盗でした


しばらく、二人とも黙っていた。

「……翼くんは、悪くないよ」

やっと、口が動いた。

翼くんが、こちらを見る。

「友達を助けたくて、動いたんでしょ。結果が思い通りじゃなかったけど、翼くんが傷つけたかったわけじゃない」

「でも──」

「私だって、怪盗ムーンがいつも正解とは思ってない」

私は、翼くんをまっすぐ見た。

「盗み出すことが、本当に正しいのか。相馬先輩のときみたいに、別の方法が必要なときもある。失敗するかもしれない。それでも、やらないよりはいいって、信じてやってるだけ」

翼くんは、しばらく黙っていた。それから、ふっと息を吐いた。

「……そうだな」

翼くんの肩から、何かがすとんと落ちたように見えた。

「翼くん」

私は、翼くんを見据えた。

「怪盗ムーンのこと、秘密にしてくれるなら、一つだけ約束して」

「約束?」

「私を、助けようとしないで」

翼くんが、きょとんとする。

「危なくなったら、自分で判断する。翼くんに守ってもらわなくても、私は大丈夫だから」

翼くんは、一瞬だけ目を丸くした。それから──ふっと笑った。どこか、すっきりしたような顔で。

「わかった。……でも、一つだけ俺にも言わせて」

「なに?」

翼くんは、ノートをポケットにしまいながら、少し声を落とした。