クラスの透明人間は、夜を駆ける怪盗でした


夜中の十二時。

スマホの画面を見つめたまま、私は眠れなかった。

差出人不明のメッセージ。

そこに添付されていたのは、一枚の写真だった。

暗い図書室の中で、『星の王子さま』の本を手に取る人影。

黒いパーカーに、黒いマスク。……間違いなく、怪盗ムーンだ。

写真をよく見ると、窓の外から、暗い中でフラッシュを使わずに撮ったみたいに少しぼやけている。

誰が送ってきたんだろう?

まさか、翼くん……?

確かなことはわからない。でも嫌な予感だけが、どんどん大きくなっていく。

スマホを伏せて、私は天井を見上げた。

どう動くか。どう読むか。頭の中で、何度もシミュレーションを繰り返した。



九月二十四日、火曜日。

学校に行くと、翼くんはいつも通りだった。

「おはよう、七瀬さん」

「おはよう」

普通に挨拶を交わす。翼くんの顔を見ても、何を考えているのかさっぱりわからない。

私はずっと、翼くんのことを観察していた。

昨日の夜から、考え続けていたことがある。

あの写真を撮ったのが翼くんなら、いつ図書室に来たのだろう。

放課後、図書委員の私が本を整理している時間?

それとも、私が「任務」のために夜の学校へ忍びこんだとき?

図書室の貸し出しカードを確認すると、やっぱりそうだった。

翼くんは先週、『星の王子さま』を借りていた。返却の手続きがされていないのに、本はいつの間にか棚に戻されていた。

誰かが、あの中に「何か」を挟んだ。私が依頼の手紙をチェックするために本を開く瞬間を、じっと待ちながら。

なぜ、あの本だったのか。

答えは一つ。翼くんは、あの場所に手紙がはさまれることを知っていたんだ。

──翼くんは、私が怪盗ムーンだって、もう気づいている。