クラスの透明人間は、夜を駆ける怪盗でした


「図書委員の、七瀬先輩ですよね?」

「うん」

ひなのちゃんは、もじもじしながら言った。

「私、中村ひなのです。あの……怪盗ムーン様に、お礼を伝える方法ってありますか?」

前髪の奥から、私はひなのちゃんを見る。

「どうして?」

「リボンのこと、伝えたくて……守ってくれて、直してくれて、ありがとうって」

ひなのちゃんは、嬉しそうに笑った。

「相馬先輩とも仲直りできたんです。私、先輩のことずっと誤解してた。……ムーン様が、きっかけをくれたんだなって」

前髪の奥で、ひなのちゃんの笑顔をじっと見る。

私は制服の裾を、少し強く握った。

「きっと……伝わってると思うよ」

「本当ですか?」

「うん。怪盗ムーンは、みんなの笑顔が見たいだけだから」

ひなのちゃんは、大きく頷いた。

「じゃあ、私、新体操の大会でもっと頑張ります! お母さんのリボン、ずっと大切に使います!」

ひなのちゃんは、元気よく走って行った。

廊下の前方で、相馬先輩と出会ったひなのちゃんが、笑いながら話している。二人とも、素敵な笑顔だ。

一本のリボンが、二人を繋いだ。

──これも、怪盗ムーンのやり方。



放課後の図書室。夕焼けが、校舎をオレンジ色に染めている。

ドアが開いて翼くんが入ってきた。

「こんにちは、七瀬さん」

「こんにちは」

翼くんは、カウンターに近づいてくる。

「新体操部の件、うまくいったみたいだね」

「……そうみたい」

翼くんは、カウンターの上に小さなメモを置いた。

「これ、落ちてたよ」

そう言って、出口のほうへ歩き出す。

何だろう? 私は、折りたたまれた紙を開いた。