「ひなの……本当にごめん。あなたの大切なリボンを壊してしまって」
ひなのちゃんは先輩を見上げ、目を大きく開く。
「先輩……これ」
「怪盗ムーンが、直してくれたんだ。私は……お願いするしかできなかったけど」
ひなのちゃんは、縫い合わされた部分にそっと指を当てる。
「すごくきれいです」
ひなのちゃんの目から、涙がこぼれた。
「ありがとうございます、先輩。怪盗ムーン様も」
リボンを胸に抱きしめて、ひなのちゃんは泣いた。二人は、どちらからともなく抱き合った。
入口の陰で、私はカバンのストラップをぎゅっと握りしめた。
のどの奥が、熱くなる。良かった、本当に良かった。
*
九月二十三日、月曜日の昼休み。廊下を歩いていると、小柄な女の子とすれ違った。
新体操部のジャージを着た、一年生。ひなのちゃんだ。
「あの……」
その子が、私を呼び止めた。



