クラスの透明人間は、夜を駆ける怪盗でした


「このリボン、先輩がひなのちゃんに返してあげてください。自分の手で」

先輩は息を止めた。

「『ごめんね』って、ちゃんと伝えてください。言葉がうまく出てこなくても、自分の口で」

先輩はしばらく黙っていた。それから、こくりと頷く。

「わかった。逃げずに、ちゃんと謝らなきゃいけないね」

カバンにリボンをしまいながら、ふと凛ちゃんのことを思った。

この依頼を書いてくれたのは、凛ちゃんだ。ひなのちゃんのために、便せんの端が波打つほど、泣きながら書いたかもしれない。

凛ちゃん、私ちゃんとやるよ。

「明日の朝、ここに来ます。先輩も来てくださいね」

「うん……」

相馬先輩は、目元をそっと拭った。

「七瀬さん、ありがとう。私あなたのこと、もっとちゃんと知りたいな」

何も言えなかった。ただ、マスクを戻す。

「先輩……今度の試合、頑張ってください」

「ありがとう」


窓から外に出ると、夜風が頬を撫でた。冷たいけど、心地いい。

今日は、何も盗んでいない。

その代わり、約束をした。リボンを直して、二人をつなぐ約束を。



その夜。自分の部屋で、私は机にリボンを広げた。

淡いピンク色の布。裂けた部分が、口を開けるように広がっている。

私はまず、裂けたところを指でそっと整えた。ばらばらになった布の端を、元の向きに戻す。

急いで縫い合わせると、余計に形が歪む。